日本PTEG研究会が設立されてからすでに23年が経っておりますが、この度、令和7年9月28日に当研究会の会長に就任いたしましたので、ご挨拶を申し上げます。まず経皮経食道胃管挿入術percutaneous trans-esophageal gastro-tubing (PTEG/ピーテグ)が考案開発されてから現在までの経緯をご説明します。 PTEGは、経皮内視鏡的胃瘻造設術percutaneous endoscopic gastrostomy (PEG/ペグ)の実施が不能もしくは困難な患者さんに対する代替法として1994年に考案開発いたしました。開発当初は、主に緩和医療の分野で癌性腹膜炎などによる消化管通過障害によって嘔吐を繰り返す患者さんに実施され、長期間の消化管減圧法として、その有効性の評価を受けました。現在では、経管経腸栄養法にも応用され実施されています。医療認可を受け胃瘻に準じた保険診療が開始され、2002年には日本PTEG研究会が設立されましたが、2005年に特定保険適応が解除され一時的に自費診療となりました。2007年より新たに治験を実施し、2009年には薬事承認を得て、2011年4月からは暫定保険適応が再開されましたが、同年11月に厚生労働省から「喀痰および経管栄養に関する実質的違法性阻却論」という省令が発令されました。その省令では、医療職ではない介護福祉士等でも一定の講習を受講すれば、経鼻胃管や胃瘻からの栄養剤投与が実施できるという内容が含まれていて、頸部食道瘻であるPTEGは、明記されておらず、これに当たらないという解釈で、それを理由にPTEGを実施してしまうと施設への受け入れが困難になったり、本来、PTEGの良い適応症例であってもPTEG自体を選択しない事例が増えていて、患者さんへの不易な現状が問題になっています。 当たり前のことですが、栄養管理は医療の最も基本的な治療の一つです。栄養がなければ、傷も病気も機能も治りません。経口摂取が長期間困難な患者さんでも、消化管が使える場合は、点滴等ではなく経管経腸栄養法等で消化管から栄養を摂取して管理することが、栄養学的にも免疫学的にも最もリスクの少ない有効な栄養管理であることは、世界的な常識とされています。純日本製のPTEGという手技が、患者さんにとってより良い医療の選択肢として、全世界へ普及し利用されるためにも、この手技の安全性を担保し継続することと、上記の様な政策的な問題点を改善し、PTEGの実施と管理および受け入れの、より良い環境を実現するために、全力で尽力する所存でおります。つきましては今後も変わらぬご指導とご鞭撻を賜りたく存じます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
令和7年10月
独⽴⾏政法⼈国⽴病院機構 村⼭医療センター
外科 統括診療部長
大石 英人


